インターネットの世界では、ドメイン名とIPアドレスが重要な役割を果たしています。
しかし、私たちは通常、IPアドレスを覚えるのではなく、分かりやすいドメイン名を使用します。
このドメイン名をIPアドレスに変換するための仕組みがDNS(Domain Name System)です。
本記事では、インフラエンジニア初心者向けにDNSサーバーの基本概念とその重要性について解説します。
DNSとは?
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DNSは「Domain Name System」の略で、インターネット上で使用される名前解決の仕組みです。
具体的には、人間が理解しやすいドメイン名(例:example.com)を機械が理解できるIPアドレス(例:192.0.2.1)に変換します。
DNSがなければ、私たちはウェブサイトにアクセスする際に、長い数字の列を覚えて入力しなければなりません。
DNSは1983年にポール・モカペトリス(Paul Mockapetris)によって提案され、インターネットの初期から進化してきました。
最初は、ホスト名とIPアドレスの対応をファイルで管理していましたが、インターネットの拡大に伴い、これが非現実的となり、現在の分散型のDNSシステムが導入されました。
DNSの仕組み
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DNSの仕組みは一見複雑に思えますが、基本的な流れを理解すれば難しくありません。
ユーザーがブラウザにドメイン名を入力すると、そのリクエストはまずDNSリゾルバ(DNS resolver)に送られます。
DNSリゾルバは、DNSキャッシュを参照してIPアドレスを検索しますが、見つからない場合は図1の手順に従います。
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- ルートDNSサーバーに問い合わせる。
- ルートDNSサーバーは、トップレベルドメイン(TLD)DNSサーバー(例:.com、.net)の情報を返す。
- リゾルバはTLD DNSサーバーに問い合わせ、次に権威DNSサーバーの情報を取得する。
- 最後に、権威DNSサーバーが目的のドメイン名に対応するIPアドレスを返す。
これらのサーバーには以下のような種類があります。
- ルートDNSサーバー:インターネット全体のDNSクエリの最上位に位置するサーバー。
- TLD DNSサーバー:特定のTLD(例:.com、.org)に対応するサーバー。
- 権威DNSサーバー:特定のドメイン名に対して最終的な回答を提供するサーバー。
DNSレコードの種類
DNSレコードにはさまざまな種類があり、それぞれ異なる役割を持っています。
ここでは、主要なDNSレコードについて説明します。
- Aレコード:特定のドメイン名に対してIPv4アドレスをマッピングします。
- AAAAレコード:特定のドメイン名に対してIPv6アドレスをマッピングします。
- CNAMEレコード:あるドメイン名を別のドメイン名の別名として設定します。これにより、複数のドメイン名を同じIPアドレスに対応させることができます。
- MXレコード:メールエクスチェンジャーを指定し、どのサーバーがメールを受信するかを決定します。
- NSレコード:ゾーンの権威DNSサーバーを指定します。
- PTRレコード:IPアドレスからドメイン名を逆引きするためのレコードです。
- SRVレコード:特定のサービスに対応するサーバーの情報を提供します。
- TXTレコード:テキスト情報を保存するためのレコードです。
SPF(Sender Policy Framework)やDKIM(DomainKeys Identified Mail)の設定に使用されます。
DNSの設定と管理
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DNSサーバーを設定し管理するためには、いくつかのステップを踏む必要があります。
以下では、主要なDNSサーバーソフトウェアのインストールと基本設定について説明します。
BIND(Berkeley Internet Name Domain)
- インストール:
sudo apt-get install bind9
(Ubuntuの場合) - 設定ファイル:
/etc/bind/named.conf
にてゾーンの定義を行います。 - ゾーンファイル:
/etc/bind/db.example.com
にてレコードを定義します。
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Unbound
- インストール:
sudo apt-get install unbound
- 設定ファイル:
/etc/unbound/unbound.conf
にて設定を行います。
Microsoft DNS
- Windows Serverの「役割と機能の追加」からDNSサーバーをインストールします。
- DNSマネージャーでゾーンとレコードを設定します。
基本的な設定方法としては、各ソフトウェアの設定ファイルにゾーンの定義を行い、対応するゾーンファイルにレコードを追加します。
DNSのセキュリティ
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DNSはインターネットの根幹を支える重要なインフラであるため、セキュリティも重要です。
一般的な脅威とその対策について解説します。
DNSキャッシュポイズニング
攻撃者がDNSキャッシュに偽の情報を注入し、ユーザーを悪意のあるサイトに誘導する攻撃です。
対策としては、DNSSEC(DNS Security Extensions)の導入があります。
DNSSECはデジタル署名を使用してDNSデータの改ざんを防ぎます。
DDoS攻撃
DNSサーバーに大量のリクエストを送りつけてサービスを妨害する攻撃です。
対策としては、Anycast技術の導入やレートリミットの設定があります。
トラブルシューティング
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DNSに関連する問題が発生した場合の対処法について説明します。
ネーム解決ができない場合
DNSサーバーの設定を確認し、適切なゾーンファイルとレコードが存在するかチェックします。
また、ファイアウォール設定やネットワーク接続も確認します。
DNSサーバーの応答が遅い場合
DNSキャッシュの設定を見直し、キャッシュの有効期限を適切に設定します。
また、サーバーの負荷状況を監視し、必要に応じてリソースを増強します。
レコードが正しく反映されない場合
ゾーンファイルの編集後、DNSサーバーを再起動して変更を反映させます。
また、TTL(Time To Live)値が適切に設定されているか確認します。
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使用するツールとしては、以下のコマンドが役立ちます。
- dig:DNSクエリを送信し、詳細な結果を表示します。
- nslookup:簡単なDNSクエリを実行します。
まとめ
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DNSはインターネットの基盤を支える重要な技術であり、その基本的な理解はインフラエンジニアにとって必須です。
本記事では、DNSの基本概念、仕組み、レコードの種類、設定と管理、セキュリティ、トラブルシューティングについて詳しく解説しました。
次のステップとして、さらに深い知識を得るために、公式ドキュメントや専門書を参照することをお勧めします。
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